2025.11.24

【戦慄】星島貴徳の現在と事件の全貌｜無期懲役判決の理由と「神隠し」

yuro

2008年（平成20年）4月、東京都江東区の巨大な賃貸マンションで発生した「江東マンション神隠し殺人事件」。

被害者の女性が、自宅マンションの敷地内から一歩も外に出ることなく、煙のように姿を消したこの事件は、その不可解さから「現代の神隠し」と呼ばれ、日本中を恐怖のどん底に突き落としました。

犯人は、被害者の部屋の「2つ隣」に住む男、星島貴徳（ほしじま・たかのり）。

なぜ、これほどまでに残虐な事件でありながら、彼には死刑ではなく「無期懲役」の判決が下されたのか。

検索キーワードとして今なお注目される岡山県での生い立ちや、法廷で語られた「性奴隷」という歪んだ動機、そして被害者遺族の無念まで、膨大な資料と記録を基に、この事件の深層に迫ります。

この記事を読むとわかること

「現代の神隠し」と呼ばれた事件の全貌と、警察が犯人に辿り着いた決定的な証拠
エリートSEだった星島貴徳が「性奴隷」計画を抱くに至った生い立ちと歪んだ動機
残虐な遺体損壊を行ってもなお、死刑判決が下されず「無期懲役」となった理由
事件から15年以上が経過した星島貴徳の現在と、社会に残したセキュリティへの教訓

Contents

第一章：現代の神隠し ― 事件発生と「空白」の1ヶ月
第二章：捜査の急転 ― 一個の指紋が暴いた真実
第三章：星島貴徳という男 ― 岡山のエリートから転落した人生
第四章：戦慄の一夜 ― 犯行の全貌と「性奴隷」計画
第五章：鬼畜の所業 ― 遺体損壊と証拠隠滅
- バラバラに解体し、トイレに流す
- 臭いと音への異常な警戒
第六章：裁判員裁判直前の審判 ― 生か死か
第七章：事件が残した爪痕と現在
- オートロック神話の崩壊とセキュリティの変化
- 星島貴徳の現在
【戦慄】星島貴徳の現在と事件の全貌｜無期懲役判決の理由と「神隠し」・まとめ

第一章：現代の神隠し ― 事件発生と「空白」の1ヶ月

当時33歳のエリート・システムエンジニアであった彼は、被害者の捜索を行う警察官や、取材に訪れたマスコミに対し、平然と「心配ですね」「早く見つかってほしい」と答えながら、その裏で自室にて想像を絶する証拠隠滅工作を行っていました。

事件発生から逮捕、そして裁判での戦慄の証言に至るまで、事件の全貌を徹底的に解剖します。

事件の発端は、週末を迎えようとしていた金曜日の夜でした。大都会のマンションで起きた「人間消失」の謎は、どのようにして発覚し、どのように捜査が進められたのでしょうか？

2008年4月18日、金曜日の夜に消えた日常

2008年4月18日、午後7時半頃。東京都江東区潮見にある、9階建ての大型マンションの最上階、916号室。ここに姉と二人で暮らす23歳の会社員女性Aさんは、その日もいつも通り会社から帰宅しました。

しかし、その直後に帰宅した同居人の姉が目にしたのは、あまりにも不可解な光景でした。

玄関にはAさんの靴が揃えられている。部屋の照明もついている。作りかけの夕食や、買い物袋もそのまま残されている。

それなのに、Aさんの姿だけがないのです。

姉はすぐにAさんの携帯電話に連絡を入れましたが、繋がることはありませんでした。不吉な予感を覚え、室内を見渡した姉は、玄関付近の壁や床に、拭き取られたような微量の血痕を発見します。ただならぬ事態を察知した姉は、即座に警察へ通報しました。

防犯カメラが捉えた「帰宅」と、存在しない「外出」

駆けつけた警視庁深川署の捜査員たちは、マンションに設置された防犯カメラの映像を徹底的に解析しました。

そこには、確かな事実が記録されていました。 Aさんがマンションのエントランスを通り、エレベーターに乗り、9階で降りて自宅方向へ歩いていく姿です。

しかし、その後、Aさんがマンションから「出た」映像は、どのカメラにも一切記録されていませんでした。マンションには複数の出入り口がありましたが、その全てにカメラが設置されており、死角はありません。窓やベランダからの転落や脱出の痕跡も皆無でした。

「人間が、密室状態のマンション内で蒸発した」

この物理的にあり得ない状況は、捜査員たちを混乱させると同時に、マスコミの注目を集めることになります。ワイドショーは連日このマンション前から生中継を行い、「神隠し事件」としてセンセーショナルに報道しました。

マスコミ取材に答える「隣人」星島貴徳の異常性

事件発生直後から、警察はマンション全戸への聞き込み捜査を開始しました。当然、Aさんの部屋の近隣住民も対象となりました。

その中に、916号室の2つ隣、918号室に住む男、星島貴徳がいました。

彼は警察の聞き込みに対し、極めて協力的で、落ち着いた態度で応対しました。さらに驚くべきことに、彼はマンションに詰めかけたテレビ局のインタビューにも積極的に応じています。

「警察が来て大変なんです」「女性の悲鳴などは聞いていない」「怖いですね、早く犯人が捕まってほしいです」

カメラに向かって淡々と、しかしどこか他人事のように語る彼の姿は、全国のお茶の間に放送されました。当時、彼を疑う者は誰もいませんでした。彼こそが、Aさんを自室に監禁し、その時まさに遺体の処理を行っている張本人であるとは、夢にも思わなかったのです。

第二章：捜査の急転 ― 一個の指紋が暴いた真実

事件から約1ヶ月間、捜査は難航を極めました。マンションの住人全員が容疑者となり得る状況の中で、警察はどのようにして星島貴徳へとたどり着いたのでしょうか。

警察が注目した「水道使用量」等の不審点（※補足情報）

捜査本部が設置され、延べ数千人の捜査員が動員される中、警察は地道な「潰し」捜査を行っていました。その中で、捜査員たちの疑念が徐々に星島貴徳へと向き始めた、いくつかのきっかけがあったと言われています。

一つは、事件発生直後の彼の行動です。彼は警察が全戸の指紋採取を求めた際、当初は協力的な姿勢を見せながらも、日程調整などで微妙に採取を先延ばしにするような動きを見せていました。

また、一部の報道や捜査関係者の話として語られるのが、事件直後の「水道使用量」の急増です。一人暮らしの男性としては異常なほどの水が、事件後の数日間で使用されていたというデータが、捜査線上に浮上したとも言われています（※公式発表では指紋が決め手）。

決定的な証拠「ダンボール箱の指紋」

事態が動いたのは5月に入ってからです。警視庁捜査一課は、マンション住民全員からの指紋採取と、任意での家宅捜索を断行する方針を固めました。

星島もこれに応じざるを得なくなり、指紋を提供します。そして、鑑識の結果、Aさんの部屋に残されていたダンボール箱から採取された「犯人のものと思われる指紋」の一つが、星島の指紋と完全に一致したのです。

5月25日、逮捕の瞬間と発見された「微細な証拠」

2008年5月25日、日曜日。警察は星島の部屋へ踏み込み、彼を住居侵入容疑で逮捕しました。当初、星島は「やっていない」と否認していましたが、指紋の一致を突きつけられると、観念したように犯行を認め始めました。

しかし、警察が部屋に入った当初、Aさんの姿はどこにもありませんでした。部屋は整然としており、一見すると事件の痕跡など何一つないように見えました。

しかし、鑑識課員によるルミノール反応検査（血痕反応）や、排水管の調査により、戦慄の事実が明らかになります。浴室やトイレの配管の奥から、肉眼では確認できないほど細かくされた、人体の一部や骨片が発見されたのです。

星島は、約1ヶ月もの間、警察やマスコミの目を欺きながら、Aさんの遺体を徹底的に解体し、この世から消滅させようとしていたのでした。

第三章：星島貴徳という男 ― 岡山のエリートから転落した人生

残忍な犯行に手を染めた星島貴徳とは、一体どのような人物だったのでしょうか。彼が育った環境、そして彼が抱えていたコンプレックスと闇について深掘りします。

岡山の教育熱心な家庭と「神童」の挫折

星島貴徳は1975年、岡山県で生まれました。実家は代々続く家系であり、両親は非常に教育熱心であったと伝えられています。

地元の公立中学校では成績優秀で、周囲からは「神童」「真面目な優等生」と見られていました。高校は、岡山県内でもトップクラスの進学校に進みます。ここまでは、順風満帆なエリート街道を歩んでいるように見えました。

しかし、優秀な生徒が集まる進学校の中で、彼の成績は徐々に低迷していきます。さらに大学受験に失敗し、一浪することになります。この「挫折体験」が、彼の人格形成に暗い影を落とした最初のきっかけだったのではないかと、後の裁判や精神鑑定で指摘されています。

上京後の生活と「優秀なSE」という仮面

大学進学を機に上京した星島は、卒業後、ゲーム会社やIT関連企業でシステムエンジニア（SE）として働き始めます。

事件当時の彼は、派遣社員という立場ではありましたが、そのスキルは高く評価されており、月収は約50万円を得ていました。都内の家賃の高いマンション（事件現場）の最上階に住み、経済的には何不自由ない生活を送っていました。

職場の同僚たちの証言によれば、彼は「非常に大人しく、目立たない」「仕事は正確で速い」「トラブルを起こすような人物ではない」という評価でした。誰もが彼を「真面目なサラリーマン」だと信じていました。しかし、それは社会生活を営むための精巧な「仮面」に過ぎませんでした。

孤立する私生活と肥大化する「妄想」

職場では誰とも深く関わらず、プライベートでの友人もほとんどいなかった星島。彼の孤独を埋めていたのは、インターネットと、歪んだ性的な妄想でした。

彼は自宅で一人、アダルトビデオや、アングラな性的嗜好を満たすコンテンツに没頭していました。裁判で提出された証拠の中には、彼自身が描いたとされるグロテスクなイラストや、同人誌の構想ノートが含まれていました。そこには、女性を支配し、痛めつけることで快感を得るという、サディスティックな世界観が詳細に描かれていました。

「現実の女性とはコミュニケーションが取れないが、妄想の中の女性なら支配できる」

この歪んだ思考が、徐々に現実世界へと侵食し、ついには「妄想を実行に移す」という最悪の決断へと彼を導いていったのです。

第四章：戦慄の一夜 ― 犯行の全貌と「性奴隷」計画

ここからは、裁判での星島貴徳自身の証言と、検察側の冒頭陳述を基に、あの夜916号室と918号室の間で何が起きたのかを再現します。

「3日間かけて調教する」戦慄の計画

星島が犯行を決意したのは、事件のわずか数日前でした。自宅で自慰行為にふけっていた際、「隣の女性を連れ込んで、自分の思い通りにしたい」という衝動が抑えきれなくなったと語っています。

彼がターゲットにしたのは、Aさん個人ではありませんでした。「916号室に住む女性」という記号としてしか見ていなかったのです。彼は裁判でこう述べています。

「一番近くで一人暮らしをしている。連れ込むのは難しくないだろうと思いました」「普通のOLは金曜の夜から土日休みだから、そうすれば3日かけて調教できる。会社にも行かなくていい」

彼は、金曜日に拉致すれば、月曜日の朝まで3日間、誰にも邪魔されずに監禁できると計算していました。その目的は「性奴隷」にすること。

自分のセックスによって女性を屈服させ、精神的に依存させ、自分なしでは生きられないように「調教」するという、ポルノや漫画の影響を強く受けた、あまりにも非現実的で身勝手な計画でした。

午後8時、待ち伏せと襲撃

4月18日の夜。星島は自室の照明を消し、玄関で裸足になって体育座りをし、壁に耳を当てて隣の様子を伺っていました。 916号室のドアが開く音、鍵を開ける音を聞き逃さないためです。

そして、Aさんが帰宅し、玄関のドアを開けた瞬間、星島は自室から飛び出しました。彼は包丁を隠し持ち、Aさんの背後から襲いかかりました。

「騒ぐな！殺すぞ！」

彼はAさんを脅し、916号室の中に押し入りました。しかし、ここで星島の誤算が生じます。 Aさんが必死に抵抗し、大声を上げたのです。

パニックになりかけた星島は、Aさんの顔面を殴打し、さらに包丁を突きつけて脅迫しました。そして、恐怖で動けなくなったAさんに目隠をし、手首を縛り上げ、自分の部屋である918号室へと連れ込みました。この間、わずか数分。誰にも気づかれることのない、静寂の中での凶行でした。

計画の破綻と冷酷な殺意への転換

自室に連れ込んだ後、星島はAさんをベッドに拘束しました。しかし、ここで彼は「計画の失敗」を悟ります。

殴打した際、Aさんの額が切れ、大量に出血していたのです。さらに、連れ去る際のもみ合いで、916号室の玄関や廊下に血痕が残ってしまったことにも気づきました。

「怪我をさせてしまった。これでは、月曜日に解放しても警察に言われる」「血痕を見られたかもしれない」

彼の頭の中を支配したのは、Aさんへの謝罪や後悔ではなく、「自分の保身」だけでした。当初の「性奴隷にして楽しむ」という目的が達成できないと悟ると、彼は即座にAさんを「処分すべき対象」として切り替えました。

「もう、殺すしかない」

彼は、命乞いをするAさんの首に包丁を突き立て、その命を奪いました。拉致から殺害まで、あまりにも短く、あまりにも理不尽な最期でした。

第五章：鬼畜の所業 ― 遺体損壊と証拠隠滅

殺害後、星島が行った行為は、日本の犯罪史上でも類を見ないほど徹底的で、おぞましいものでした。この「遺体なき殺人」を作り上げようとした行為こそが、裁判員や裁判官、そして世間に最も強い嫌悪感を抱かせた要因です。

バラバラに解体し、トイレに流す

星島は、Aさんの遺体を浴室に運び込みました。そして、事前に用意していたノコギリや文化包丁を使用し、遺体を細かく切断し始めました。

通常のバラバラ殺人では、遺体を運び出しやすいサイズ（数個のパーツ）に切断し、山林や海に遺棄するケースが大半です。しかし、星島の手口は異なっていました。彼は、遺体を「肉片」と呼べるレベルまで細かく刻んだのです。

その肉片を、トイレに流して下水道へと廃棄しました。骨は細かく砕き、粉末状にして生ゴミに混ぜたり、同様にトイレに流したりしました。頭部などの流せない大きな骨格については、冷蔵庫に保管し、少しずつ処理を進めました。

臭いと音への異常な警戒

この解体作業は、警察やマスコミがマンション周辺に詰めかけている最中に、連日連夜行われました。彼は、異臭で近隣住民に気づかれないよう、換気扇を回し続け、消臭剤を大量に使用しました。

また、骨を砕く音が響かないよう、布団を被せてハンマーを使うなど、極めて冷静かつ隠密に作業を進めました。

逮捕された際、彼の部屋からは、犯行に使われたノコギリや包丁が押収されましたが、それらは綺麗に洗浄されていました。

しかし、最新の科学捜査は、排水管の奥に残ったわずかなDNA片を見逃しませんでした。星島が「完全犯罪」だと信じていた工作は、科学の力によって暴かれたのです。

第六章：裁判員裁判直前の審判 ― 生か死か

2009年1月、東京地方裁判所で星島貴徳の裁判が始まりました。この裁判は、2009年5月から開始される「裁判員制度」の直前に行われた、プロの裁判官のみによる最後の大型殺人事件裁判の一つでした。

検察側の主張：「人間性の欠如、死刑以外にない」

検察側は、論告求刑において、被告人の更生の可能性を真っ向から否定しました。

「被告人は、被害者を性欲の捌け口としか見ておらず、思い通りにならなければ殺害し、ゴミのように処理した」「その残虐性、冷酷さは人間性が欠如しており、鬼畜の所業である」「遺族の処罰感情は峻烈を極めており、死刑以外の選択肢はない」

検察官は、過去の判例（永山基準）における「被害者1名での死刑適用は慎重であるべき」というハードルを越えるため、犯行の残虐性と、遺体損壊という「死後の尊厳の冒涜」を強く強調しました。

弁護側の主張：「前科がなく、反省している」

一方、弁護側は事実関係を全て認めた上で、情状酌量を求めました。

「被告人は罪を認め、深い反省の念を示している」「過去に前科はなく、真面目に社会生活を送っていた」「計画性はあったものの、殺害そのものは突発的であり、当初から殺害を目的としていたわけではない」

弁護側は、あくまで「無期懲役」が相当であると主張しました。星島本人も、法廷で「申し訳ありませんでした」と謝罪の言葉を口にしましたが、その表情や口調からは、心からの悔恨は感じられないと、傍聴した多くのジャーナリストが記録しています。

判決：無期懲役の理由と「永山基準」の壁

2009年2月18日、東京地裁は星島貴徳に対し、無期懲役の判決を言い渡しました。

平出喜一裁判長は、判決文の中で犯行を厳しく糾弾しました。「冷酷非道で、人間としての尊厳を微塵も感じさせない」「性奴隷にするという動機は、あまりにも自己中心的で酌量の余地はない」

しかし、結論として死刑を選択しなかった理由について、以下のように述べました。

殺害された被害者が1名であること: 日本の最高裁が示した死刑適用の目安「永山基準」では、被害者が1名の場合、身代金目的誘拐殺人や、過去に殺人歴がある場合などを除き、死刑回避が傾向として強い。
前科がないこと: 星島には犯罪歴がなく、社会人として一定の適応を見せていたことから、矯正（更生）の可能性が完全にないとは断定できないとされた。
突発的な殺意: 当初の目的は拉致・監禁であり、殺害はその計画が失敗したことによる事後的な決断であった（最初から殺すつもりで侵入したわけではない）という点が考慮された。

この判決に対し、法廷内ではどよめきが起こりました。「体をバラバラにしてトイレに流した男が、死刑にならないのか」という世間の驚きと怒りは、当時のネット掲示板やブログを中心に爆発的に広がりました。

しかし、検察側、弁護側双方が控訴せず、この一審判決で刑が確定しました。これは検察側も「現行の法解釈では、高裁で死刑に覆る可能性は低い」と判断せざるを得なかったことを意味しています。